“as Canadian as maple syrup(メープルシロップと同じくらいカナダ的)”
という言葉を知っていますか?
カナダと言えばメープルシロップしか思いつかないほど(失礼!)カナダの象徴的な食べ物。
カナダは世界の純粋なメープルシロップの実に80%を生産しており、そのうちカナダ国内で採れるなんと3分の2以上がケベック州で生産されています。
そのメープルシロップが採取されるのが、雪解け間近の3月上旬から4月下旬。
このメープルシロップシーズンの間、シュガーシャックと呼ばれる砂糖小屋で採取された樹液を煮詰める作業が行われます。
このシュガーシャックで振る舞われる伝統料理を食べに行くのが、ケベックの人たちの恒例行事。
今回は、ケベック州に住んでいるからこそ体験できる、この時期だけのシュガーシャック体験をお伝えします。
シュガーシャックとは?
↑メープルシロップの原料となる樹液を採取するバケツ
シュガーシャックは、カナダのメープルシロップ生産の中心地であるケベック州を代表する伝統的な砂糖小屋です。
フランス語ではcabane à sucre(カバナスークル)と言うよ
カナダのフランス語圏ケベック州には、およそ200ものシュガーシャックがあります。
毎年雪解けを迎える頃、3月上旬から4月下旬にかけてメープルの木(サトウ楓、レッド楓、ブラック楓)の樹液が採取されます。
採取された樹液をゆっくりと煮詰めてできあがるのがメープルシロップ。
多くのシュガーシャックはシーズンになると、メープルシロップ生産だけにとどまらず、メープルシロップを楽しむための伝統的なカナディアン料理を体験する場所としてオープンします。
メープルシロップはカナダ経済を支える重要な製品。
毎年7億5000万ドルものお金を産み出しているそうです。
シュガーシャックの歴史
画像出典:Library and Archives Canada/C-58608
最初は、この地の先住民が、メープルの木を伐採してメープル樹液を採取し、それを煮て甘いシロップにしたり砂糖の塊にして保存したりしていました。
その後、1700 年代後半から 1800 年代初頭にフランス人入植者の間で、カエデにドリルで穴を開け、木製の注ぎ口を取り付けるという方法が広まりました。
フランス人入植者たちは、くり抜いた大きな丸太に樹液を集めて砂糖小屋まで運び、それを金属の大きなやかんで煮詰めてシロップにしました。
冬が長く厳しいケベック州の人々は、メープルシロップのシーズンになると、冬の終わりと暖かな春の到来をお祝いしにシュガーシャックに集まり、歌い踊ったり、食事をして楽しみようになりました。
この時期が復活祭(イースター)前の断食と悔い改めの期間と重なっているにもかかわらず、カトリック教会の影響が絶大だった1950年代半ば以前も、シュガーシャックに集まってお祝いをする習慣を人々は忘れなかったようです。
シュガーシャックで体験できること
メープル樹液の採取見学
場所によって規模は異なりますが、メープルの木に穴を開け、樹液を採取する過程を間近で見ることができます。最近はモダン化された、ほとんどのところでは、樹液の注ぎ口をチューブで繋いで効率的に採取できるようになっています。
メープルシロップ製造過程の見学
メープルシロップの製造過程には、樹液を採取した後、今度は大きな鍋で煮詰めて水分を蒸発させて濃縮させる工程があります。
この過程で樹液は徐々に濃縮され、糖分の割合が高まります。
適切な濃度になったら、最後に不純物を取り除いて完成です。
この完成したフレッシュなメープルシロップを味わえるタフィー小屋が、食事をする場所に隣接しています。
食後、のちに紹介するメープルタフィーを食べる時に、この製造過程を見学することができる場合が多いです。
メープルシロップを味わう食事
シュガーシャックのほとんどの人の目的はおそらくこの食事。
スープとパンから始まって、サーバーの人がどんどん食べ物が入ったボールやお皿を運んできます。
それをみんなでシェアするスタイル。
凝ったものは出てこない、至ってシンプルで素朴な料理ですが、上のようにお皿に盛り盛り食べ物をのせて、そこにドバドバッとメープルシロップを贅沢にかけるのが美味しいんです。
典型的なシュガーシャックフード
- エンドウ豆のスープ
- 焼き立てのパン
- ポークスプレッド
- 厚切りポークハム
- ソーセージリンク
- カリカリベーコン
- ミートボール
- ミートパイ
- オムレツ
- ベイクドビーンズ
- 揚げた豚の皮
- ローストポテトまたはフライドポテト
- ピクルス
- ビーツ
- パンケーキ
- メープルシュガーパイ
- メープルシロップミニドーナツ
- そば粉クレープ
- 飲み物(牛乳、コーヒー、紅茶)
場所によって多少は異なりますが、これだけ盛りだくさんの食事がテーブルに並べられます。
そして、おかわりし放題!
でもビュッフェと同じで、「食べるぞー!」と意気込んでも、結局デザートに辿り着く頃にはお腹がはち切れそうになって、思っていたよりも食べられないのが現実。
雪の上のメープルタフィー
これが、ケベック州でシーズン中にシュガーシャックに行く醍醐味かもしれません。
子どもたちは、これが一番の楽しみ。
食後、メープルタフィー小屋に移動します。
そうすると、できたばかりのメープルシロップを雪の上にちょっとずつ流してくれます。
雪の冷たさで固まったメープルシロップを、木の棒にくるくるっと巻いたらメープルタフィーの出来上がり。
これが甘くて、くっついた雪の食感がシャリシャリしてすごく美味しいんです。
私はこの時点で大体お腹いっぱいすぎて2本が限界ですが、パートナーや子どもたちは3回くらいはおかわりします。
ケベック州の観光地に行くと、オフシーズンでも観光客向けにデモンストレーションしながら販売しているのを見かけるので、もしチャンスがあれば試してみてください。
モントリオール近郊おすすめシュガーシャック
45 Chem. du Sous-Bois, Mont-Saint-Grégoire, QC J0J 1K0
大人 $42.95(パンデミック前は$30でした……)
13歳〜15歳 &29.95
6歳〜12歳 $20.50
3歳〜5歳 $16.50
2歳以下 無料
パンデミック後、ここ数年我が家が利用しているMont-Saint-Grégoire(モンサン・グレゴア)にあるシュガーシャック。
今まで行ったシュガーシャックの中でも上位に入るここ近年のお気に入りです。
ご飯が美味しいのはもちろん、子どもが遊べる木の遊具があったり、トラクターに乗っていけるお土産屋さんがあったりと、ファミリー層は楽しめます。今年は、メープルウィスキーとプラム酒の試飲ができる小屋もありました。
ご飯のいい写真がないので、ファームにいたアルパカの写真を貼っておきます。
最後に:シュガーシャックに行く際の注意事項
早めに予約しよう
人気のシュガーシャックは予約ですぐ埋まってしまいます。
行きたいシュガーシャックが決まったら、遅くても1ヶ月前には予約しておいた方がいいと思います。
今年は一緒に行く友人が1月に予約を入れてくれました
ブーツは必須
シュガーシャックの季節は、雪解けの季節です。
シュガーシャックが建っているのは、ほとんどが元々は森の中だった所です。
なので地面が舗装されておらず、雪解けの時期は地面が泥々です。
まだ雪が積もっていたらスノーブーツでもいいと思いますが、暖かくてもせめてレインブーツを履いていきましょう。
また、服装も必ず天候をチェックして、寒さ対策をきちんとしていきましょう。
とにかくお腹を空かせて行く
先ほど述べたように、本当にたくさんの料理が運ばれてきます。
お代わり自由なこともあって、大食いの人でも十分満足できるだけの量があるので、行く日はその前の食事を抜くか、軽く済ませるくらいにして、胃の中に十分なスペースを空けておきましょう。
ケベックの人にとっては外せない春の風物詩シュガーシャック。
パンデミックの間は他の飲食業同様苦境に立たされました。
限られたシーズンしかオープンしないシガーシャックにとって、ビジネスができないのは大きな痛手だったはず。
小屋に行って食事をするのが醍醐味のシュガーシャックですが、パンデミックを機にテイクアウトを始めました。ケベックの人たちは、大好きなシュガーシャックが無くなってしまっては大変だということで、こぞってテイクアウトをし、ビジネスを支援しました。
じゃぽママ一家もテイクアウトしたよ
ケベック地域に根付く、シュガーシャック文化。
10年前に比べると、10ドル以上値上がりし、家族で行こうとすると結構な出費になります。
それでも、春が近づくと、シュガーシャック貯金をしてもでもケベックの人たちは通い続けるんだろうなと思います。