ユネスコの世界遺産にも登録されている旧市街が美しい、カナダ・ケベック州の首都ケベックシティ。
壮大な城壁に囲まれたシャトーフロントナックを中心に、古い建物が並ぶヨーロッパのような石畳を歩いていると、まるでおとぎ話の世界にいるような気分を味わえます。
韓国ドラマを見る方ならご存知、かの大人気ドラマ「トッケビ」の舞台になった場所としても知られています。
私のようなミーハーにはたまらない
そんなケベックシティですが、どっかりと雪が積もり時にはマイナス30度の極寒となる毎年1月後半から2月中旬(2024年は1月25日から2月11日まで)にかけて、「ケベック・ウィンターカーニバル」が開催されます。
今年で70周年を迎えた世界最古の雪まつりです。
その大きさは世界最大規模で、さっぽろ雪まつり、ハルビン氷祭りと合わせ『世界三大雪まつり』であり、リオデジャネイロのカーニバル、ニューオーリンズのマルディグラに次ぐ、世界第3位のカーニバル。
毎年、100万人もの人が訪れる大人気のフェスティバルです。
わざわざ、「1年で一番寒い時期にカーニバルを開かなくても…」と思う私はまだまだ日本人。
カナダ人は、「寒さが厳しいからこそみんなで楽しいことをして長い冬を乗り越えよう!」というマインド。
今回は、実際にケベックシティのウィンターカーニバルに行ってみた筆者の視点から、正直な感想と共にご紹介しようと思います。
ケベックウィンターカーニバルについて
1894年初めてのウィンターカーニバルで建てられた氷の宮殿 photo by Louis-Prudent Vallée(1837-1905)
場所と開催時期
場所
カナダ東部ケベック州の州都ケベックシティの旧市街を中心に開催されます。
パスが必要なアクティビティのほとんどは、旧市街の丘にあるエイブラハム平原で行われます。
ケベックシティ全体では、パスがなくても参加できるイベントも多数開催されます。
開催時期
毎年通常1月後半から2月中旬に開催されます(2024年は1月25日から2月11日まで)。
ケベックのカーニバルの歴史
ケベック・ウィンター・カーニバル(仏:Carnaval de Québec、英:Quebec Winter Carnival)の歴史を見ると、古くは植民地時代のヌーベルフランス(1534-1763)にまでさかのぼります。
深い雪と厳しい寒さに阻まれて何もすることができなかった当時の人は、一番寒くて暗い1月から2月に、家族や友人で集まり、ごちそうや、生演奏、ジークと呼ばれるフランス系カナダ人の伝統的な踊りでお祝いをしました。
1894年に初めて州による大規模な雪祭りが開催され、世界大戦と大恐慌による中断を経て、1955年に、現在も続いている近代化した形でのウィンターカーニバルが復活しました。
マスコットのボノム・カーニバル
カーニバルには公式マスコットがいます。
その名も“ボノム(Bonhomme)”。
ボノム(Bonhomme)とは、雪だるまのフランス語、ボノム・ド・ネージュ(Bonhomme de neige)の略。
カーニバルが復活した後の1955年に初めて登場し、それ以来少しずつリニューアルをしながら、今のボノムになっています。
ボノムは、ケベックの人々のモットーである「la joie de vie(人生の喜び)」を体現していると言われています。
ケベック州議事堂前の立つ巨大ボノム
カーニバル会場を歩いていると、ボノムが腰に巻いてるフランス系カナダ人の伝統的な帯、セインチュール・フレシェと呼ばれるベルトを腰に巻いている地元の人も結構見かけます。
等身大のボノムは1体しか存在していないので、出会えたらラッキー。
ケベックの人にとってはサンタクロースみたいな存在?!
遭遇したラッキーな人は一緒に写真を撮ることができます。
私たちは遭うことができませんでしたが、義母が別日に氷の宮殿前で一緒に写真を撮ってもらっていました。
どうしても姿を見たい場合は、土曜日の夜に行われるパレードの最後の山車で登場します。
エフィジー(Effigy):公式パス
氷のお城があるカーニバルのメイン会場に入場したりアクティビティに参加したい場合は、エフィジー(Effigy)と呼ばれる公式パスを購入します。
12歳以下は入場無料。
パスは上の写真のようなプラスティックのボノムマスコットの形で販売されています。
公式パス1つ30ドル(2024年)。
早割りを利用すると20ドル(開催初日10日前くらいまで)。
フルカーニバルパス60ドル(早割55ドル):カーニバル限定ニット帽、ホットドリンク1杯、ホットアルコールorノンアルコール1杯、限定マグカップなどが付いてくる
このマスコットのペンダントを、見えるようにコートのファスナーなどにつけて散策します。
ちなみに、チケットがなくても、ケベックシティの旧市街を散策している途中にも氷の彫刻が飾られていたり、後で紹介するパレード、氷上のカヌーレースなどは見られるので、チケットがなくても雰囲気は味わえます。
ケベック・ウィンターカーニバルの見どころ
パレードなどの特定のイベントは週末のみに開催されますが、氷の彫刻&雪像鑑賞や会場訪問などのアクティビティはカーニバル期間中いつでも楽しむことができます。
氷の宮殿の探索
「アナと雪の女王」の世界に来たかのような幻想的な氷の宮殿は、マスコットのボノムカーニバルの家として作られ、カーニバルの象徴的なアトラクションの一つです。
ケベック州議事堂の向かい側の会場に位置していて、ここでカーニバルの開会式も行われます。
およそ2,000 個の氷のブロックで作られた氷の城のデザインは毎年変わります。
宮殿の中に入ると、氷の彫刻や氷の椅子、カーニバルに関する様々な展示がされています。
中でも人気なのが、氷の滑り台で子どもだけでなく大人も挑戦できるので、私たちが行った時は行列ができていました。
氷と雪の彫刻コンテスト
日本人ならニュース等でさっぽろ雪まつりの巨大な雪像を見たことある人も多いと思いますが、ケベックの雪まつりにも同じような国際雪像コンテストがあります。
過去作品
写真:Tourism Quebec / Gaëlle Leroyer
2024年の今年は過去に例がないほどの暖冬で、私たちが見に行った日は残念ながらすでにコンディションが良くないものが多く、雪像も小さいものしか見られませんでしたが、過去作品の中には、さっぽろ雪まつりレベルの大作も制作されていたようです。
2024年作品の一部
氷の彫刻が展示されているエリアには、氷でできたアイスバーや、ギネス記録を更新した巨大なイグルーもありました。
ナイトパレード
*画像:carnaval.qc.ca
このカーニバルのメインイベントのひとつ、ナイトパレード。
例年、期間中の土曜日は毎晩パレードが行われていたようですが、2024年は2月10日(土)だけの開催でした。
パレードが行われるのは、メイン会場があるアッパーヒル(la Haute-ville)のGrande Alle(グランダレ)というメインストリート。
私たちはその前の週末に行ったので、残念ながら見ることができず。
見聞きした情報によると、パレードまでの開始時間やフロートとフロートの間が途切れ途切れで待ち時間が結構あるらしく、かなり暖かくしておく方がいいようです。
寒い中あんまり長い間待たされるのは嫌だという人は、パレードのスタート地点に場所取りをしたらいいかもしれません。
アイスカヌーレース
私たち家族は今年、これを見に行ったと言っても過言ではない、まさにケベックだからこそ見られる、極限スポーツ。
自分ではぜーーーったいにやりたくありませんが、凍てついたセントローレンス川を時には水に浸かりながらカヌーで横断する姿は感動ものです。
しかも、横断するだけでなく、1〜2回往復します。
今年は記録的な暖かさで、川の氷が溶けてシャバシャバだったこともあり、さすがにイージーするぎると判断され、初めて3往復しました。
男性チーム、女性チームそれぞれ2グループ前後に分かれてレースが行われ、大体2時間くらいで全てのレースが終了します。
レース開始の1時間前くらいから、旧市街の川沿いに見学客が場所取りをし始めます。
いいスポットで見たい場合は、30分前には川沿いに来ておいた方がいいかもしれません。
今年は暖かかったから、結構早くから観客が集まってきて待っていましたが、例年のようにもっと寒い場合は、人が集まり始めるのも遅いかも。
その他アクティビティ
左:伝統的なトボガンスライド 右:アイススライド
なるべくたくさんのアクティビティに挑戦したい場合は、日中に会場を訪れることをおすすめします。
私たち家族は日程の関係上、昼間のアクティビティに参加するチャンスは残念ながらありませんでしたが、雪国だからこそ楽しめるアクティビティのほとんどがこのカーニバルで体験できるようです。
- アイススライド
- 人間フーズボール
- 犬ぞり
- そりに乗る
- チューブ(大きなタイヤみたいなものに乗って滑る)
- アイススケート
- 斧投げ
- アイスフィッシング
- グーンズ リーグ ホッケー(特大のギアを着て4対4でやるホッケー)
- トボガンライド(1884年以来シャトーフロントナック近くにある伝統的なスライド)
- レーザーゲーム
- スノーバス(水着で雪風呂に入る、なかなかクレイジーなイベント )
- 野外コンサート
- シャトーフロントナックでの夜の仮面舞踏会(チケット別売り195ドル)
等々書ききれないほどまだまだたくさん!
アクティビティは毎年変更されるので、その年の最新情報はケベック・ウィンターカーニバルの公式Webサイトからチェックしてみてください。
最後に:ケベック・ウィンターカーニバルを楽しむコツ
とにかく暖かい格好で
ケベックウィンターフェスティバルのイベントのほとんどは屋外で行われます。
マイナス10度、時にはマイナス20度以下になることも珍しくないケベックの冬。
極寒に耐え得るウィンターコート、スノーパンツ(子どもだけでなく大人も!)、スノーブーツ、帽子、マフラーそして手袋で完全防寒すること。
さらに、ホッカイロも忘れずに。
“スキー場に行く時と同じ格好で”というのが一番わかりやすいかも。
歩き回ったり、色んなアクティビティに参加している汗をかく場合もあるので、コートの下には、通気性の良い服を重ね着しましょう。
事前にイベントスケジュールを確認ある程度のプランを立てておく
このカーニバルはとにかく内容が盛りだくさん。
アクティビティやイベントのほとんどは、フェスティバル会場近くで行われますが、決まった時間や日に開催されるイベントも多いので、事前にチェックして、それに合わせて旅行日程を考えておくことをおすすめします。
今回私たちはアイスカヌーレースが開催される週末に行ったので、その代わりナイトパレード(パンフレットにはその夜も開催予定と書いてあった)とかスノーバスとか見て見たかった他のアクティビティは逃しました。
ケベックシティウィンターカーニバルは、ウィンターワンダーランドを体験できる世界でも類を見ないイベントです。
しかも、ユネスコ世界遺産に登録されている美しい街並みの雪景色も同時に楽しめます。
また、フランス文化を色濃く残すケベック州は、美味しい食べ物も意外と多い!
カナダ観光と言えば夏や秋の紅葉の時期が人気ですが、あえて雪景色の冬に訪れて、雪と氷の美しさ、カナダの冬の伝統を楽しむのはいかがでしょうか?。