モザイク国家カナダの裏にある不都合な一面

カナダには、多文化主義政策担当大臣(Minister of State for Multiculturalism)というのものが存在するほど、様々な国から来た人たちが共存していくことを大切にしている国です。

アメリカが『人種のるつぼ』と言われるのに対して、『モザイク国家』と呼ばれるカナダ。

各々の文化をミックスして、新しい“アメリカ文化”というひとつの文化を作り上げることを目標にしているのがアメリカ。

それに対して、お互いの国の文化を尊重し合って平和に共生していこうという、文化のパッチワークを目指したのがモザイク国家カナダです。。

毎年20万人以上の移民を受け入れ、450以上もの異なる国や文化の人々が共存し、多文化主義国家の好事例として取り上げられるカナダ。

ですが、様々な価値観の人々が共存するからこそ、人種間の問題も、残念ながら身近にあります。

今回は、単一民族国家日本だとなかなか身近に感じることがない、多文化主義国家カナダのリアルについて書いてみたいと思います。

もくじ

コロナ以降増えたアジア系へのヘイトクライム

まず言っておきたいのが、みんな日本と日本人は大好きだということ。

それでも、見た目だけでは何人か分からないので、アジア系住民はひとくくりにされてしまうのが現実。

コロナ以降、日本でもアメリカなどでアジア人に対してのヘイトクライムが増えたとニュースになっていたと思いますが、カナダも例外ではありませんでした。

モントリオールでも、2022年に日本人女性が「コロナを持ち込んだのはおまえたちだ」との暴言を吐かれ、タピオカ飲料の入ったプラスチックカップを顔面にぶつけられるという事件が地下鉄で発生しました。

私はこれほどひどいことはされていませんが、やはりコロナ禍に差別を受けた経験があります。

実体験

これだけ面と向かって差別的な言葉を言われたのは初めてだったので、正直ショックでした。

これ以外にも似たようなことがもう一度ありました。

10年以上カナダに住んで、差別的な態度を取られたのは数える程度、しかもコロナ前はほぼなかったことを考えると、ラッキーなのか、それともカナダ人はやっぱり他民族の人々に寛容なのか。

戦争のたびに起こる民族間の衝突

日本に住んでいると、戦争はどうしても画面の向こうの出来事のように感じてしまいます。

ですがカナダでは、実際に戦っている国から来ている人々が隣り合って暮らしています。

そうなると、どこかで戦争が起こるたびに、カナダ国内でも差別やヘイトクライムが起きてしまうという悲しい現状があります。

今回のイスラエルとガザの戦争の影響で、ユダヤ人、アラブ人双方をターゲットにしたヘイトクライムが増えています。

最近では、モントリオール市内にあるユダヤ系の小学校のドアに夜中発砲されるという事件が立て続けに起きました。

モントリオール市内のユダヤ系小学校に打ち込まれた発砲跡:CNN

パートナーの仲の良い同僚はユダヤ系ですが、今度の海外出張がイスラム教徒が多いモロッコになり、自分がユダヤ系だということでどこかで攻撃されないかと不安がっていると言っていました(私は全く見分けがつきませんが、ユダヤ系の人は顔に特徴があるらしい)。

戦争の影響を身近に感じるのは大人だけではありません。

子どもたちの友達やクラスメートにも戦禍に家族や親戚がいるという子がいたりして、戦争を一気に身近に感じるようです。

ロシアとウクライナが戦争を始めた頃、息子が仲良しだった子がロシア人でした。その子は、ロシアとウクライナ両方に親戚がいるから心配だということを話していたようで、息子もその話を聞いて、戦争の話に関心を寄せていました。

カナダの多文化主義教育

多民族国家のカナダ、子どもたちは生まれながらにして、多種多様な人種や文化の人たちに囲まれて生活していきます。

学校に行けば、クラスメートはヨーロッパ系のみならず、アジア系、ヒスパニック系、中東系、アフリカ系と、実に様々。

それが当たり前の環境なので、どんな人でも差別することなく寛容に受け入れる姿勢が自然に身につくのは言うまでもありません。

学校教育の中でも、民族や人種の多様性を尊重する意識を育むためのプログラムが取り入れらています。

多文化主義の学習活動例

  • 自分のルーツについて調べる

移民大国カナダは、子どもたちのルーツも様々。

ファミリーツリーを作成するなどしながら自分のルーツを調べて、クラスみんなの前で発表します。

  • 異なる文化や移民の歴史に関する研究プロジェクト

それぞれの児童生徒がリサーチする国を決めて、文化や歴史についてプレゼンテーションを行います。

子どもたちのクラスは、長男の時も次男の時も日本が大人気で、日本人である当の息子たちはじゃんけんに負けたとかで、日本のプレゼングループに入れませんでした😅。

  • 様々なコミュニティーからゲストスピーカーを招待

異なるバックグラウンドを持つ人を学校に招待し、それぞれの文化を紹介してもらいます。

息子たちが楽しかったと言っていたのが、アフリカ週間の時にやったというアフリカのダンスと楽器体験。

実際にアフリカ系の人を学校に招いて教えてもらったそう。

これは学童での話ですが、ジャパニーズデーもあったようで、子どもたちがアンバサダーとなって、折紙を教えたり、ひらがなやカタカナの書き方を教えたりしたこともありました。

  • 映画やドキュメンタリー鑑賞

日本に住んでいる場合、残念ながら日本語でしか映画や番組を見れない子がほとんどです。

ですが、英語やフランス語が分かるカナダの子たちは、様々な国のコンテンツを見れるという強みがあります。学校でも、カナダの映画のみならず、他の国の映画やドキュメンタリーを見る機会がある様です。

ですが、せっかくこれだけ多文化主義教育に力を入れていても、悲しいことに、家庭で親が差別的な思想を持っていると、子どもにもそれが引き継がれてしまいます。

ある大学研究機関の調査によると、実に58%のカナダ在住の子どもが、学校で人種や民族の違いによるいじめを体験又は目撃したことがあると答えたそうです。


日本人とカナダ人のミックスの我が子はどうなのか。

心配になってなんとなく聞いてみたことがあります。

「僕が日本人だと知らない子たちから、中国人だとからかわれたことがあるけど、別に嫌なことをされたわけじゃないし、気にしてない。」

とのこと。

長男も次男も同じような答え。

きっとお友達にも恵まれているのもありますが、2人がいい日本のアンバサダーになっているようで、これまで友達になった子やクラスメートはみんな日本ファンになっている様です。

うちの子どもたちは、「ママが日本人で本当にラッキー」とよく言ってくれます。

“子どもに日本にルーツがあることを誇りに思ってもらう”

それが、何か言われても気にしない、周りを巻き込んでむしろ日本ファンにさせる力になるのかもしれません。

最後に

今回ネガティブな内容を書いたことで、もしこれからカナダに来る予定がある方、又は来ようかと考えている方に不安を与えてしまったかもしれません。

でも心配しないでください。

色々ありはしますが、総合的に考えると、それぞれのアイデンティティを尊重しながら共生しているカナダは、移民の中でもさらにマイノリティである日本人にとっては住みやすい国だと思います。

日本人がほとんどの人口を占める日本でさえ価値観の違いで衝突が起こることがあるのだから、これだけ多様な文化や背景を持っている人々が集まったカナダで、問題が起こらない方が不思議な気がします。

そして、最初にも書きましたが、日本人だと言うと、ほとんどの人がとても好意的に接してくれます。

子どもたちの友達も口を揃えて「日本のものが大好き!いつか日本に行きたい!」と言ってくれています。

じゃぽママ

うちに遊びに来る時にわざわざカタカナが書いてあるTシャツを着てくる子もいてかわいい。

最近モントリオールで起こったヘイトクライムのニュースを見て今回の記事を書くことにしましたが、こんな記事を書かなくても済む世の中が来ることを願います。

もくじ