結論から言うと、
YES and NO
です。
ふざけているのか?
答えの真相はこの記事を読めば分かるわよ。
と言うわけで、ケベック州に10年以上住んでいながらフランス語が苦手、できればフランス語を使わずに暮らしていきたいじゃぽわーずが、ケベック州、特にモントリオールの実情を中心にお話いたします。
この記事はこんな人におすすめ
- モントリオール(ケベック州)での留学やワーホリを考えているけどフランス語が不安な人
- モントリオール(ケベック州)への移住を予定しているけどのエリアに住めばいいか迷っている人
- カナダのフランス語圏の生活に興味がある人
世界有数のバイリンガル都市モントリオール
バイリンガル人口
私たち家族が生活しているカナダのケベック州は、英語のイメージが強いカナダという国にありながら、実はフランス語が公用語の唯一の州になります。
wikipediaによると、ケベック州に住む71.2%の人がフランス語が第一言語、そして実に95%の人がフランス語を話すことができるらしいです。
そんなケベック州の第1の都市であるモントリオールは、フランス語圏の都市としては、実はフランスのパリに次いで大きく、カナダでも2番目に大きい都市。
そんな北米のパリと言われるモントリオールですが、世界でも有数のバイリンガル都市として知られています。
驚くべきはその割合で、何とモントリオールの人口の60パーセント(カナダ政府のサイトより)!
町を歩けばバイリンガルに当たる状態なのです。
モントリオール市内のお店に行けば、それを実感できます。
例えばお店に行くと…
Bonjour(ボンジュール)!
と、ほとんどの場合はまずフランス語で挨拶されますが、ここで「フランス語わかりませ〜ん!」と言う人は、
Hello!
と英語で挨拶し返すと、ほとんどの人が何の躊躇もなく、
How can I help you?
と、その後の会話を流暢な英語で続けてくれます。
でも、うっかり釣られて「ボンジュール」と返すとフランス語でペラペラと説明が始まるので心の準備を。
まあ、観光地のお店ならモントリオールのみならず欧米ならどこでもこんな感じかもしれませんが、観光地以外の場所でも大体のサービスをフランス語のみならず英語でも受けられます。
ただ、稀に英語が全然できない人に出くわすから油断はできねぇ
“それだけ英語が通じるなら、
フランス語が話せなくても大丈夫なのでは?”
と思うかもしれません。
私の個人的な感覚ですが、ここに根を下ろして暮らしていくには、例えバイリンガル都市と言えども、
フランス語を話せないと困る場面は結構ある
と言うのが、長年住んで得た結論です。
ただ、住むエリアを選べば、ほぼ英語だけで暮らしていくことも可能のようです。
次の項目では、モントリオールのエリア別に見て行きたいと思います。
エリア別に見る話されている言語
モントリオール市というのは、実はニューヨークやバンクーバー同様、1つの島にあります。
下の色分けされた地図は、どのエリアでどの言語を話されているかを示したものです。
データが2011のものなので少し古いのですが、おそらく今もそんなに変わっていないはず。
大まかに分けると、
青→Francophones(フランス語話者が多い地域)
赤→Anglophones(英語話者が多い地域)
緑→Allophones(英仏以外の話者が多い地域)
ピンク→Franco-Anglo(英仏バイリンガル)
となり、色が濃いほどその割合が多くなります。
歴史的な背景があって、イギリス軍が1760年にモントリオール征服を果たした後、18世紀後半から19世紀半ばにイギリス系の人々が西側に多く移り住み、元々住んでいたフランス系の人々が島の東側へ追いやられていった名残が今も残っているとようです。
West Islandに英語系の人が多いのは分かったとして、ではダウンタウンを中心としたその周辺地域はどうなのか。
どうやら、Boulevard Saint-Laurent(サン・ローラン大通り)を境に西と東でフレンチ系か英語系かに分かれるようです。
上の地図を参考に代表的な地域を挙げると以下のようになります。
フレンチ系住民が多い→Le Village, Le Plateau , Rosemont周辺
英語系住民が多い→Côte-des-neiges, South West, Verdun, Westmount周辺
ちなみに、観光地や大学や語学学校が集まるDowntownやOld-Montrealエリアはバイリンガル率が圧倒的に高いので、英語系の学校に行く学生さんは英語だけでも大丈夫だと思います。
こちらに長年住んでいる中で、NDGと言われるCôte-des-Neigesにある地域や、Westmount(駐在の方多い印象)に住んでいる日本人の方に多く出会いましたが、日々の暮らしは英語だけでほぼ大丈夫だと言っている人もいます。
フランス語が話せない移住者の前に立ちはだかる法律
フランス語圏ならではの独自の文化と歴史があるケベック。
ですが、4000万人いるカナダの人口のうち、Francophone(フランス語話者)は2021年の調査でわずか21.4%。
しかも、フランス語圏ケベック州でも最近Anglophone(英語話者)率が増えていて、最近の国勢調査によると、英語を第一言語とする人の数が100万人を突破し、少しずつ増加しているとのこと。
英語系の人たちの増加により、自分たちの文化と歴史がこのままでは消滅してしまうのではと恐れているケベック政府。
そのため、ケベック州にはフランス語の使用を促進(強制)するための法律が存在します。
それが、Bill101(Quebec Charter of the French Language)とBill96(An Act respecting French, the official and common language of Québec)。
Bill 101(Quebec Charter of the French Language):
- 公的文書と広告: 公的文書、広告、商標などはフランス語で表示されるべきであり、英語の使用は制限されます。ただし、併記は可能である場合もありますが、フランス語が優先されます。
- 教育: 公立学校での教育はフランス語で行われ、フランス語以外の言語での教育には厳格な制限があります。私立学校もフランス語を主要な教育言語として使用することが求められます。
- 労働市場: 労働市場でもフランス語が主要なコミュニケーション言語として使用されることが求められ、フランス語以外の言語の使用に制限があります。
Bill 96(An Act respecting French, the official and common language of Québec):
- 地域自治体と企業: フランス語を使用することが義務付けられた地域自治体や大企業では、フランス語を使用することが求められ、英語の使用が制限されます。
- 教育: 公立学校でのフランス語の使用が強化され、私立学校でもフランス語が主要な教育言語として使用されることが求められます。
- 公共サービスと企業: 公共サービスや企業でもフランス語の使用が強化され、フランス語以外の言語の使用が制限されます。
この法律によって英語を話すことが禁止されているわけではないのですが、フランス語ができないと困るなという場面が出てきます。
私は特に子育てと就職活動の際にそれをすごく実感しました。
子どもの学校
モントリオールには、フランス語系と英語系両方の公立学校があります。
ですが、親がフランス語が分からないからと言って、じゃあ子どもを英語系の公立学校に通わせようと思ってもそれはできません。
子どもを英語系公立学校へ通わせたい場合、保護者が英語系の学校で義務教育を受けた場合でなければ、英語系の公立学校へ子どもを入れることができないのです。
どうしても英語系に入れたければ、授業料の高い私立の学校に通わせることになります(お金に余裕があるアジア系移民の人たちはそうしている家庭も多いです)。
ほとんどの移民はフランス語が苦手でも、フランス語系公立学校に子どもを通わせることになるので、自ずと学校関係の様々な手続き、学校とのやり取り、子どもの学習サポートなどをフランス語で行わなければいけません。
子どものクラスメートもフランス語しか分からない場合が多いので、遊びに来た時はフランス語でコミュニケーションをとることになります。
私のように、パートナーがフランス語が分かる場合は相手に頼ればいいのですが(正直頼りっぱなし)、保護者のどちらもフランス語が苦手な場合は大変です。
就職する際の語学の壁
フランス語ができなければ、全く働き先がないということはありません。
ただ、フランス語ができないと、選択肢が一気に狭まります(日系のレストランや企業に勤めたり、お店の裏方に周ったり…)。
学生さんやワーホリの人に人気の接客業でさえ、他州と違って、英語ができるだけでなくフランス語ができることも求められます。
例えばですが、モントリオール求人サイトをいくつかチェックすると、
• Bilingual (fluent in both English and French is mandatory);英仏両方流暢であること
• Knowledge of French (not proficient);流暢でなくてもいいがフランス語の知識があること
• Bilingual (French and English) both written and spoken;書くこと話すこと両方で英仏バイリンガルであること
• Strong communication skills in French;フランス語での会話が得意であること
という文言が並んでいます。
法律上、法的な文書や契約書、広告、商品ラベル、公式な書類、企業に関連する文書などは原則としてフランス語で作成する必要があるため、フランス語の知識が必要な場合が多いのです。
実体験。。。
私はフランス語が全く流暢ではなく、基本的な会話はならなんとかできる程度です。
聞き取りは話すよりはもう少しできるので、フランス語に英語で返事するということも多々…。
それでも、CVを提出する際は、英仏両方で作成して、どちらの言語もできることをアピールしました。
面接に呼ばれた際は、英語とフランス語どちらで面接したいか聞かれたので正直に「英語で」とお願いしました。
採用されて配属された部署の取引先は英語圏でしたが、フレンチ系カナダ人がチームの半分以上を占めていたので、会議はフランス語で大半は行われていました(私、ポカーン)。幸い上司がバイリンガルだったので、私が分かってなさそうだと感じると英語で内容を繰り返してくれました。
私が採用された理由の一つに、流暢ではなくてもやはり英語フランス語両方分かるというのは大きかったのではと思います。
実際、通った学校のクラスメートでフランス語ができない人たちは仕事探しに苦労し、結局他州に引っ越したり、せっかく取った資格とは全く違う職種に就いたり、就職を諦めたりしていました。
実は、逆パターンもあります。
パートナーの会社は、取引先の関係でチームのほぼ全員が英仏両方のバイリンガルですが、1人英語がほとんどできない人がいるそうです。その同僚は、勤続年数を考えたらそろそろ昇給しても良さそうだけど、英語ができないことで任せられる仕事が制限されるために、なかなか昇給できないらしいです。
モントリオール市郊外での生活
モントリオール市内であれば、細かいことを気にしなければなんとか英語だけで暮らし行けるし、ご近所さんもバイリンガルの確率が高いかもしれません。
では、モントリオール市周辺都市はどうなのでしょうか。
実は近年の異常な住宅価格高騰によって、モントリオール市郊外に移り住む人が増えています。
モントリオール島からは全部で8つの橋がかかっており、東西南北に広がる都市に続いています。
バス、メトロ、電車の交通機関も通っていて、近いところであれば車だと渋滞がなければ20分もあればダウンタウンまで行けます。
では、それらの郊外も市内と同じくらい人々はバイリンガルなのか。
私の感覚では、地域によりますが一気にフランス語色が強くなると感じています。実際、郊外で出会った現地の人で、英語がほとんど話せないというケベック人に何人も出会いました。
そういう人たちは、モントリオール周辺出身ではなく、結婚や就職でケベックシティ周辺やもっと遠くの地域から来ていることが多いです。
ケベック州の場合、モントリオールを一歩出ると、フランス語だけで十分暮らして行けるからです。
特に子どもを持つと、学校関係、友達付き合い、習い事などで現地の様々な人と会話する機会が増えますが、その際フランス語ができないとしんどい、というのが正直なところです。
結局のところ
フランス語圏モントリオールで英語だけで暮らして行けるのか。
YESでありNOということです。
⭕️YESの場合
- モントリオール市内の英語圏に住む
- 交友関係に英語を話す人が多い
- パートナーの家族が英語系又はバイリンガル
- 子どもの学校が英語系
- 仕事を選ばない
- 現地の人がどう思おうと気にしない
❌NOの場合
- モントリオール市内のフランス語圏に住む
- 郊外に住む
- 交友関係にフレンチ系カナダ人が多い
- パートナーの家族がフレンチ系カナダ人
- 子どもの学校がフレンチ系
- 仕事を選びたい
- 現地の人と会話する時にフランス語ができないことを気にしてしまう
結局のところ、世界中どこだって、小さいことを気にしない度胸さえあれば言葉が通じなくてもなんとかやって行けます。
HSP気味な私はなかなかその領域に達すことができていませんが💦